まず電話で予約を入れて頂きます。その際、何点か弁護士の側からお尋ねすることがあります。
お電話を頂いた方と患者さんとの関係、医療機関がどこか、診療科目は何で、どんな治療行為を問題(医療ミス)であるとお考えであるのか、 結果はどうなったのか、時期はいつかなどです。
お話しをうかがって来所して頂くかどうかをお話しします。
相談日の前に、事実の経緯、何が問題であると考えられているか等を簡単にまとめたペーパーを送付して頂くことが多いです。
相談日に事実経緯等のお話しをうかがうだけで、かなりの時間がかかります。まとめられたものを相談日に渡され、相談者の方の前で読むのも同様に時間がかかります。 また事前に目を通しておけば、問題となる疾患等について簡単な下調べもできます。やはり事前に、まとめて頂いたペーパーをお送り頂く方がいいと思います。
診断書等の医療記録の写しを送って頂くこともあります。
なお相談日には関係しそうな資料は全部持ってきて頂くのがよいと思います。
相談日には、事前に頂いている資料等に基づきながら、お話しをうかがって、医療過誤の可能性について、検討していきます。
お話しをうかがった段階で判断できることは、医療過誤と考えることができるかどうかを検討する前提の、調査をお引き受けるかできるかどうかです。
医療記録も入手しておらず、協力医の意見も聞いていない段階で、ミスがあったかどうか、裁判で勝てるかどうかの見通しをつけることは難しいと思います。
お話しをうかがって、医療過誤の可能性が低いと思われる場合には、その旨をお話しして相談のみで終わるケースもあります。
事実調査は、カルテなどの医療記録を入手し、分析する作業になります。
カルテ等の医療記録を入手するには、カルテ開示の手続による場合もありますが、改竄のおそれを考え、証拠保全の手続による場合もあります。
証拠保全とは、カルテ類の改竄を防止するために、裁判を起こす前に、裁判所の命令に基づき、カルテ類を保全する手続をいいます。
入手したカルテ類を分析し、医療行為の適否等について検討します。
医学調査としては、まず医学文献を収集し調査します。
カルテ類を分析し、問題点を抽出し、医学文献に照らして検討した上で、弁護士なりの、見通しをつけますが、弁護士は臨床医ではなく、医療については素人ですから、多くのケースでは、第三者的な立場で意見を言ってくれる協力医に相談することになります。
調査の結果、病院側に過失があり、有責であると考えた場合、いきなり訴訟するのではなく、示談交渉(訴訟前交渉)をする例が多いように思います。
示談交渉のみで病院側が責任を認めて、損害賠償に応じるケースもあれば、決裂して訴訟になるケースもあります。
提訴にあたって、原告側(患者側)は、訴状すなわち事実経緯、過失、損害、因果関係に関する自らの主張を記載した書面とそれを立証する証拠を提出します。
これに対して被告は答弁書・準備書面で、原告側の主張に対する認否・反論をし、さらに原告側から準備書面で再反論し、攻撃防御が繰り返されることになります。
従前、訴訟、とりわけ、医療訴訟は時間がかかるとされてきましたが、近時は審理期間の短縮のための努力がなされています。
争点整理手続は、まさに争点を絞り込むための手続です。
ここでは、被告(病院側)が医療記録を証拠として提出し、診療経過一覧表を作成します。
原告(患者側)も証拠を提出し、診療経過一覧表に対する認否や原告としての事実の主張をします。
そうやって、争点を絞り込んでいきます。
証人尋問についても、集中証拠調べ手続が行われ、原則として1日で証拠調べを終了します。
医療訴訟は、優れて専門的な事項を判断するものですので、鑑定といって、裁判所が選任した専門家(医師、大学教授であることが多い)から、意見を聞くことがあります。
従前は、この鑑定に時間がかかるとされてきたのですが、神戸地裁では鑑定人ネットワークが発足し、迅速に鑑定人が選任される体制が取られ、また鑑定書の提出も早くなっているようです。
訴訟の帰趨は、鑑定人がどのような判断をするかに関わる要素が大きく、訴訟において、きわめて重要な局面と言えます。
問題は、公平で公正な鑑定が、かならずしも、なされるとは限らない点です。
不利益な鑑定がなされた場合、患者側それをどうやって乗り越えていけるかが勝負の分かれ目になります。
最終的に、裁判所が判決という形で判断を示します。
しかし、判決前に、裁判所から和解案が示され、判決ではなく、和解という形で解決することも少なくありません。
和解には、ほぼ勝訴といってもいい内容の、勝訴的な和解と、そうではない敗訴的な和解があります。